マンションで鍼灸院を開業する方法

ワンルームマンションで開業

この記事は2007年に商店街に面する路面店で初めて鍼灸院を開業、2021年にマンションに移転した私が経験した事をこれから開業を目指している鍼灸師の方に向けてお伝えする記事です。

この記事はさくら治療院 岩城が編集しています。

さくら治療院 岩城写真

路面店のデメリット

2007年に初めて鍼灸院を開業した時は商店街に面した路面店で初めての方も入りやすい、という大きなメリットがありましたが反面、いろいろと困った事が多かったのも事実です。路面店のデメリットは

  • 家賃が高い
  • 新聞勧誘など飛込みの営業が来る
  • 犬のフンや隣近所の植木の水などで店前が汚れる
  • 町会費を取られる 
  • 近所の子供が店前でたむろする・いたずらする など

以上のように様々で、近隣には商店だけでなく住宅も多かったので、土地柄のせいなのかコチラの迷惑も考えない人たちもいて、その方たち対してクレームを言うのも角が立つのでジッと我慢するしかない、という状況も多かったです。

不動産屋探し

最初に取り掛かるのが「どこの不動産屋で物件を探すか」ですが、大きく分けて

  • 居住用物件専門の不動産屋
  • 居住用以外にも貸店舗・事務所も取り扱っている不動産屋
  • 貸店舗・事務所をネットに載せている不動産屋

となります。駅や繁華街、商店街の不動産屋の多くが居住用物件の取り扱いが多く、貸店舗事務所を取り扱っている不動産屋は意外に少なくて探すのに苦労します。私の経験上、居住用物件専門の所に「ひょっとしたら鍼灸院にも利用可能な物件があるかも」と考えて訪ねてみても「うちでは取り扱っていません」の返事しか返ってきませんでした。

自分の足で不動産屋巡りをするなら貸店舗・事務所の物件を店頭に載せているところの方が話は早く、私が最初に鍼灸院を開業した時も店頭の貸店舗のチラシを見て相談し、契約することが出来ました。

居住用の物件を店舗・事務所に利用可の物件を探すのは「〇〇〇区 賃貸マンション 事務所可」「〇〇〇区 賃貸マンション 店舗可」と検索すると不動産のサイトが出てきて、そこでいろいろ物件を比較してサイトからメールで不動産屋に問い合わせすると、歩き回って不動産屋巡りする必要もなく短時間で探すことが可能で、この方法が一番のおススメです。

居住用と店舗の違い

家賃・共益費に消費税

賃貸マンションを居住用ではなく店舗として使用するときには家賃と共益費に消費税が加わります。例えば家賃8万円共益費5千円の物件では8千5百円の消費税がかかり、月々の支払いはトータル9万3千5百円となるので注意です。

家賃保証会社との契約

最近は賃貸で家賃保証会社と契約することも多くなっていますが、居住用より店舗の方が支払う金額が高いことがあり、私も最初の契約時と年間の支払いも高くなっています。「物件のチラシに載っていた金額と違う!」と驚かれないように「居住用より店舗は高い」と思っていた方が良いです。

鍼灸院の構造設備基準

厚生労働省令で定められる基準は

① 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること

② 3.3平方メートル以上の待合室を有すること

③ 施術室は、室面積の七分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない。

④ 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

(参考)あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

窓の大きさには注意

「値段の割に部屋が広くて良かった。ワーイワーイ」なんて喜んでいると注意が必要です。室面積の七分の1以上の換気の窓は思ったよりハードルが高いです。

路面店で開業している時、施術室に出入りできるドアがあったのですが、それは換気用の窓とはならず、部屋の上に換気用の窓が2つ付いていたのですが、大きさが全然足らなくて結局その窓の1つを外して換気扇をつける羽目になりました。

この換気扇が部屋を密閉させない(隙間風が入ってくる)原因となり、冷暖房の効率が著しく下がって電気代が随分とかかりました。皆さんも気を付けてください。

保健所への届け

保健所への届けについてはご自分の開業する市区町村の保健所のホームページをご覧になってみてください。

上の写真は私が届を出した大田区保健所のホームページです。リンクはコチラ

開設届を出す時の大まかな流れを説明します。

①事前相談

鍼灸院を開設するにあたって国の決めた基準(床面積・空調設備の有無など)にあっているか、物件の見取り図を持参して保健所に確認してもらいます。

図面は物件を紹介してくれた不動産屋か内装工事をしてくれた業者さんにお願いすると大抵は作ってくれます。私はその図面にさらにベッドの大きさや位置(壁からの距離・換気扇の場所など)細かく書き足しました。どのくらい詳しく書かなくてはいけないかはご自身が行かれる保健所に問い合わせてみてください。

事前相談で一番強く言われるのは施術室と待合室・換気の部分で、施術室と待合室を分けるものは固定されたものでなくてはいけません。パーテーションや動かせる家具などは2つの部屋を分けるものとしてはダメで、私は路面店時は板を床に固定、借りたマンションはワンルームだったので廊下を待合室にしようとしたのですが、廊下が待合室に必要な3.3平方メートルに足らなかったのでカーテンレールを天井に固定して、カーテンによって1部屋を施術室と待合室に隔てて使用しています。

みんな賃貸ではなるべく天井や壁に穴を開けたくはないと思いますので、ワンルームなら廊下が3.3平方メートル以上あって待合室として使える所か(この場合廊下と部屋の間に扉が必要です)、1kなど2部屋以上ある物件を探す必要があります。(もちろんこの場合はキッチンが3.3平方メートル以上あって待合室として使えることが条件です)

私の知り合いは他の区で開業していますが、廊下を待合室として利用してロールカーテン(天井に取り付け)で施術室と分けるくらいの簡単さだったので、区によって判断は違ってくるのでご自身の市区町村の保健所に問い合わせてみてください。

事前相談がOKならば、開設届の用紙をもらって終了です。

②開設届提出

正副2枚に必要事項を記入後、鍼灸の免状の現物とコピーと担当者が検査に来る時のための駅やバス停などから施術室までの簡単な地図を持って保健所に提出します。

その時に担当の方と話し合って検査の日時を決めるので、余裕を持って検査を受ける為にスケジュールはなるべく開けていた方が良いと思います。

③保健所の検査

約束していた日時に図面と開設届の副本を持って保健所の方が検査に来ます。提出された図面・開設届と一致しているか、の検査ですが担当の方によって詳しく見る方もいるかもしれませんので確実に正確に記入した方が安心です。

参考資料 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

税務署への届け

開業したら税務署に届けを出す義務がありますので、開業後速やかに開業届を提出します。

税務署 開業届ページ

国税庁の個人事業の開設届出・廃業届出等手続ページからPDFで必要書類をダウンロードします。

国税庁 個人事業の開設届出・廃業届出等手続

鍼灸協会に加入

開業したら施術中の事故に対する鍼灸保険に加入することをお勧めします。鍼灸の保険のために団体に加入するならなるべく年会費(月会費)などが安い方が負担は少ないので一般社団法人 全国鍼灸マッサージ協会をお勧めします。

入会金5,000円、年会費6,000円、一番安い保険は年12,000円で負担は割と少ないです。

リンクはコチラ→一般社団法人 全国鍼灸マッサージ協会

開業に必要なもの(オートクレーブ)

使用するもの全てがディスポーサブル(使い捨て)ならば必要ないかもしれませんが、そうでなければオートクレーブ(高圧滅菌機)が必要です(必要かどうかは念のため、担当の保健所に尋ねてください)。私は「からだはうす」で購入しました。その他の道具類・消耗品も安くて配送も遅くないので利用してます。

医療廃棄物業者と契約

鍼などの感染性の廃棄物は専門の業者さんに処分をお願いしています。

専用の箱を渡されるので、目一杯詰めたらフタをして渡します。フタは一度閉めたら開かないの注意です。未来環境サービス株式会社リンクはコチラ

お灸専門という方法も

私がお灸の講習会、灸法臨床研究会に参加していた時、お灸専門で開業されていた先生と出会いました。平戸幹四郎先生は開業してからお灸専門なので使う道具はモグサ・線香・灸点紙・オリジナル竹筒などシンプルだったようです。開業の選択肢のひとつとして参考にしてください。

東京神田にある鍼灸の道具を取り扱っている「三景」に平戸先生の施灸方法のDVDが販売されています。また昭和の名灸師と呼ばれた深谷伊三郎先生の書籍の販売や深谷先生のお灸の方法を後進に伝えている灸法臨床研究会のDVDも販売されています。

リンクはコチラ

トップページのDVD(赤い矢印)をクリック

灸法臨床研究会のDVDをクリック

2005年のところに平戸先生のDVDはあります。(その他の年も探してみてください)

せんねん灸
任督療法参考図書画像
無農薬栽培びわの葉

電子灸という方法も

写真は「バンシンプロ」という電気で熱を発生させる道具(単3電池2本使用)

電子灸は煙を出さないので壁が汚れる事も換気扇を回す必要も無い便利なアイテムです。

電子温灸器 バンシンプロ

オリジナルの問診票

通販サイトにも問診票はありますが、自分で作った方が使い勝手が良いので私は自分の治療スタイルに合わせて作りました。以下の記事で紹介していますので、興味のある方はご覧ください。PDFでアップしているので印刷して使えます。

問診票(予診表)

資料の入手方法

鍼灸学校在学中よりも開業後の方が勉強の必要性が大幅に増します。その時に書籍などの資料を入手する方法を私の経験からお伝えします。

図書館で借りる

開業資金で貯金が減った後に書籍をお金を出すのがキツイ時は、「図書館で借りる」が一番です。今の図書館はIT化が進み、区内の全図書館から取り寄せられるようになり開業直後は本当にお世話になりました。(現在も結構利用してます)

参考に大田区の図書館ページのリンクを貼っておきます。ご自分の住所地の図書館ページを是非ご覧になってください。

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古本(古書)を探す

書籍を探す時、Amazonなどの通販サイトで探す事が多いですが、絶版の書籍はとんでもない高額で出品されていることが多く、なかなか手が出せません。そんな時は「〇〇〇(書籍名) 古書」で探すと比較的安く手に入ることがあります。以下のサイトは東洋医学関連の書籍を探すのに便利なサイトです。

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国立国会図書館の複写サービス

図書館にも古書店にも無い書籍も国立国会図書館なら見つかるかもしれません。

私は「長野式鍼灸 キー子スタイル」をある先生の個人的な勉強会で教わったのですが、その時先生から「松本岐子先生が医道の日本に寄稿された記事で2000年までのものに目を通してくるように」と宿題をいただき、記事を集めようとしたのですが、母校の国際鍼灸専門学校には医道の日本のバックナンバーは1冊も無く、国立国会図書館に行って複写サービスを利用しました。

上の写真は複写サービスで手に入れたものと、古書店から買った医道の日本からコピーしてまとめたものです。2000年までの物だけでは物足りなくなって2000年以降も集め、現在手に入るものの9割ぐらいは持っているかもしれません。

複写サービスはネット上でも出来るので興味のある方はリンク先を観てください。

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鍼灸OSAKAのバックナンバー

鍼灸OSAKAは開業鍼灸師にとって役に立つ雑誌ですが、Amazonや古書店には在庫が見当たらない事が多いです。そんな時、森ノ宮医療学園出版部のHPに在庫がありますので、是非ご覧になってください。

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まとめ

賃貸マンションは路面店よりは入りにくいので集客に苦労することもありますが、「出来るだけ固定費を抑えたい」という方の開業の選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?特に女性鍼灸師が女性の患者さん専門でマンションで開業すれば、隠れ家的サロンのような鍼灸院で喜ばれるかもしれません。

問い合わせ・予約はさくら治療院の公式LINEまで↓

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