井穴刺絡療法のやり方⑤どの井穴を刺絡するか その1 経絡テスト

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はじめに「井穴刺絡療法とは」をご覧ください。

手足の井穴図

経絡テスト(The Meridian Test)とは

どの井穴を刺絡すべきか内臓疾患などは浅見先生の著書「21世紀の医学」に書いてあるので、それを見ながらやっていけばいいのですが、運動器疾患(腕を上げると痛む・腰を動かすと痛む、など)については、他に参考となる本があります。

経絡テスト 向野義人 医歯薬出版株式会社

福岡大学の向野義人先生の経絡テスト(医歯薬出版株式会社発行)はシンプルな検査法で、術者に特別な感覚を必要とさせずに初学者でもすぐに使える方法論です。経絡を伸張させる動作をして、痛みなどの感覚異常が出ないか患者さんに聴きながら、どの経絡に問題がありそうかを検査します。

経絡テスト 上肢の屈曲
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上肢の屈曲動作で痛みが出た場合、この動作では心経・小腸経が伸張されているのでこの2つの経絡(両方か片側)に問題があるかもしれないと考え、刺激ポイントを探していきます。(具体的な経穴などは本を購入して読んでみてください)これを応用してこの経絡の井穴を刺絡していきます。(H3かH4)

M-Test 向野義人 医学書院
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向野先生の著書M-TEST(医学書院発行)に便利な表が付属していて、私はそれに足して自分用の表を作って使用しています。

経絡テストチェック表

M-Test付属 経絡テスト表
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上の写真はオリジナルに「経絡テスト 医歯薬出版」にある首の動作の経絡テストなど数種類をコピーして切り取って足し、腰の動作を立位と座位の2種類に変えています。

経絡テストのコツ 立位と座位

(なぜ立位と座位の2種類必要か)

例えば座って腰を曲げ伸ばししても痛くないけれど、立った状態で腰の曲げ伸ばしをすると痛いというのは、立つと足に負荷がかかるので、足に問題があってそれを腰が表現している、または足のバランスが腰に影響を与えている事も考えられます。

腰痛が主訴で来院された患者さんに問診したところ「履きなれないハイヒールを長時間履いて仕事したら腰痛がでた」と話されたので、立位と座位で検査したところ座位では痛みが出ず、立位で痛みや可動性減少が診られたので、ひたすら足の指などの圧痛点に円皮鍼(パイオネックス)を貼りました。痛みを訴える腰に1本も鍼を打たずに治療を終えたところ、なにか不満げな表情で帰宅され、「失敗した。パフォーマンスでもいいから腰に打っておけば良かった」と後悔しましたが、可動性などが改善したので何もない腰に鍼を打つのも気が引けたのでしょうがないです。8か月後、その患者さんが別な症状で来院され腰痛はどうなったか聴いたところ「あの時の鍼で1回で良くなった」とお言葉いただき、「やはり立位と座位による鑑別診断は大事」と認識を新たにしました。

経絡テスト表 使い方
経絡テスト表 使い方

著作権の関係から概要くらいでお伝えしますが、テストの動作(図の中ではポーズと書いてます)と下にチェック欄があり検査で引っかかったものにチェックしていきます。

Aの枠内にチェックが3つ付いていてほかの枠よりも多いので、まずAに関する井穴を優先的に刺絡していく、という流れになります。この方法だとものすごくシステマティックで、いろいろ考えたりせずに患者さんの体の指標(動かすと痛いなど)に従って治療を進めるため、初心者や一般の方のセルフケアにも分かりやすいです。体にある症状・違和感は施術者よりも患者さん自身の方が判るのは当たり前なので、刺絡前の状態と刺絡後の変化も判りやすいです。

経絡テストのコツ 左右差で診る

患者さんは長期間悪い状態が続いているとそれが当たり前になって何処が悪い・どう悪いなどの判断がつかなくなっている事が多いです。その為、経絡テストをやっても違和感などが判らず、患者さんからのフィードバックがないので施術者が判断ができない事もあります。患側(症状の出ている側)だけでやると判りにくいので、健側(症状のない側)と比べることによって初めて動く範囲が狭い、健側に比べると何かおかしい、など気づくので経絡テストは両側やるほうが良いです。

下肢の経絡テストでは首や腕よりも「体が硬いので」などと言われる事があり、違和感が判らない事もあるので左右差で診ることが重要です。

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