井穴刺絡療法(せいけつしらくりょうほう)とは

手足の井穴図

井穴(せいけつ)とは

井穴とは手足の爪の角の横にあり、

「反応の敏感なところであるから、急性症や激症に用いられる」(図解鍼灸実用経穴学 本間祥白著)
「即効的に治効するのも井穴のもつ特徴といえようか」(灸療夜話 入江靖二著)

と記されているように、重要な作用を持つ経穴(ツボ)で、そこから少量の血を出す井穴刺絡は
中国・日本の鍼灸師に永年使われてきた特殊な鍼灸技法のひとつです。
手足の井穴図

浅見鉄男先生の井穴刺絡学の研究

医学博士浅見鉄男先生は開業医として内科・小児科・整形外科・耳鼻科・眼科・皮膚科・精神科
など様々な疾患を井穴刺絡によって治療していくなかで、井穴と自律神経・体性神経の関係を発見し
40年間の研究の末、今までの鍼灸治療とは違う井穴刺絡学を作り上げました。
交感神経調整ツボH6

井穴刺絡療法の特徴

井穴刺絡学を基とする井穴刺絡療法の特徴の主なものは

①広い体表面ではなく、手足の爪の角というわかりやすいところにツボがある
  (特殊な訓練・勉強をしなくてもツボを見つけられる)

②どのツボを刺激すると、どの臓器の神経の不調が治せるかわかっている

③どのツボを刺激すると、からだのどの部分(腰・膝・肩・腕など)の不調が治せるか
 わかっている

④上記のことから医師も鍼灸師も一般の方も同じ治療効果を出せる再現性がある

⑤異常興奮している神経を抑制するだけなので基本的に副作用がない
  (間違ったところを刺激してもただ変化がないだけなので安心です。ただし
   低血圧の方が一度にたくさんのツボを刺激すると、立ちくらみなど起こす
   事がまれにあるので、すこしずつ様子をみながら行ってください)

上記のことから井穴刺絡療法は医療機関の治療と併用したり、事情があって医療機関に行けない方へご家族がおこなう家庭治療であったり、自分自身におこなうセルフケアの方法に合っていると思います。

ただし、あくまで補助であるので不調があったらまず医療機関を受診・検査をおこない、それから始めてください。(重篤な疾患を見逃さないためにも)

大田区の夜間・休日診療をおこなっている医療機関の案内

井穴と対応する臓器・疾患名

刺激するツボ臓器疾患名
左F1F6消化器
(食道・胃・大腸など)
(急性・慢性)胃炎
(弛緩性)便秘など
H3循環器
(心臓など)
狭心症・発作性頻脈など
右F2F6肝臓(肝炎による)疲労感・背部痛
嘔気など
(左右の)F3F4泌尿・生殖器
(腎・膀胱・前立腺など)
(膀胱炎による)頻尿・排尿時痛
腎炎・前立腺肥大など
(左右の)H6F4自律神経の交感神経の抑制高血圧症・風邪の諸症状(発熱など)
甲状腺機能亢進症など
(左右の)H5F5自律神経の副交感神経の抑制潰瘍性大腸炎・下痢・アトピー
気管支喘息・帯状疱疹・生理痛・
関節リウマチなど


内臓疾患に対しては自律神経(交感神経・副交感神経)に対して薬理作用とは
異なる方法ではたらきかけるので、薬が効かない・効きにくい方に必要と
される治療方法です。

また、体性神経(運動神経・知覚神経)に対しては、中国で発見された経絡という
からだを縦に走る特殊なルート(つながり・連動性)を利用して治療します。
                    
                                       

井穴刺絡療法をおこなう為の道具

井穴刺絡は専用の特殊な鍼を使い浅く刺すので、ほとんど痛みを感じません。

また、患者さんの希望や年齢、身体の状態によって刺絡(少量の血を出す方法)だけでなく、井穴に円皮鍼(パイオネックス)やお灸などで刺激する方法も行っています。

井穴刺絡の道具① ファインタッチ

一般の方が手軽に始めるのに便利なファインタッチとメディセーフ針

鍼灸道具は基本的には専用のショップで医療関係者以外の一般の方には販売していないのですが、ファインタッチは糖尿病の患者さんが血糖値を測るための道具の一種なのでネットで購入できます。(近隣の薬局をさんざん探しましたが販売している所を見つけられませんでした。)

井穴刺絡療法の道具 TERUMO メディセーフ ファインタッチの画像

写真のものは、私が7~8年使っている古いタイプですが、故障する気配もなく便利で長持ちです。これで調子の悪い時はセルフケアをおこなっていました。

井穴刺絡療法の道具 TERUMO メディセーフ針の画像

メディセーフ針(ネットで購入)は1箱に30本入っています。たまに「一つの井穴を刺す度に新しいものに変えるのですか?」と質問いただくのですがそこまで頻繁に変える必要はなく、1日使用したら交換する程度で良いと思います。(何日間も繰り返し使用すると切れ味が落ちるので注意です)

ファインタッチ(本体)にメディセーフ針を押し込んで

目盛りを調節して

レバーを引いて

針先を井穴にあてて「押す」と書いてあるボタンを押すだけです。(刺す前刺した後の消毒を忘れずに!)

ファインタッチは本体がプラスティック製なので滅菌することが出来ず、刺絡する本人以外の他者に使いまわすことが出来ません。

右のF5をモールで縛ってからファインタッチで刺絡した様子を動画にしました。ご自分で刺絡する方は参考にしてください。↓

井穴刺絡の道具② ハイタッチ

ハイタッチはインテック研究所の長谷川智也先生が開発された井穴刺絡の為の道具で、本体を滅菌することが出来、鍼灸師が鍼灸院で患者さんに繰り返し使えるようになっています。一般の方も購入可能で、自分自身のみに使用する場合は感染の危険性はないので特に滅菌の必要はありません。

オートクレーブ(高圧滅菌機)は鍼灸の道具類を滅菌するもので、一般の方では歯医者さんで道具類が滅菌されて出てくるのを思い浮かべていただくと判りやすいです。

滅菌バッグに入れ、三角の部分の色がピンクから茶色に変わっていたら滅菌がおこなわれた印です。

井穴刺絡療法の道具 ハイタッチの画像

現在は上の長いタイプのみ販売されているようです。価格は長谷川先生にお問い合わせください。

井穴刺絡療法の道具 ハイタッチの画像

ファインタッチに使われるメディセーフ針を差し込んで

井穴刺絡療法の道具 ハイタッチの画像

上の部分を押すとメディセーフ針の針先が出てきます。

井穴刺絡療法の道具 ハイタッチの画像

出てくる針の長さを見ながら調整します。当然、針先が長く出ているほど深く刺さるので、楽に血を出す為に長く出したいところですが、深ければ深いほど痛みは増すので加減は人それぞれ。皮膚の厚さ・年齢・手足の冷え具合など様々です。私はだいたい1~2ミリ程度出してます。

井穴刺絡療法の道具 ハイタッチによる刺絡の画像

ファインタッチにある「ビヨ~ン」というバネによる余計な振動がないのでこちらの方が痛みは少ないです。ただダイヤルを回すだけで針先の長さが調整できるファインタッチに比べ、自分で目視で調整しなくてはいけないので、老眼が進んでいる方などは少し手間が掛かるかもしれません。

貧血の方のための血を出さない刺激方法

さくら治療院では「血を見るのが怖い」「血を出すなんて痛そう」という方や、医療機関で貧血を指摘された方に対して血を出さずに井穴を刺激する方法での施術もしています。こちらの方法をご希望の方は気軽にお話ください。

井穴(H1)にパイオネックス
詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
井穴にパイオネックス
井穴(F6)にせんねん灸
せんねん灸

上記の2つの方法はご自分で簡単に出来るやり方なので、ご希望の方に詳しくお教えしています。

井穴刺絡療法の書籍(21世紀の医学)

21世紀の医学 浅見鉄男著 近代文芸社発行の画像

「21世紀の医学 井穴刺絡学・頭部刺絡学論文集
 浅見鉄男著 近代文芸社」
6,500円(税込み)をご覧ください
一般の方にも分かるように豊富な臨床例が記載されています。現在、絶版ですが浅見
先生のご子息(鍼灸師)が井穴刺絡治療をされている横浜市の浅見治療院に在庫がある
そうです。お問い合わせは045-231-2237までどうぞ。

井穴刺絡療法を受けたい方は以下の記事をご覧ください。

井穴・頭部絡療法治療院リスト

井穴刺絡療法のやり方・コツ

さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

井穴刺絡療法のやり方①手湯・足湯

井穴刺絡療法のやり方②モールで縛る

井穴刺絡療法のやり方③血の出し方(井穴刺絡動画あり)

井穴刺絡療法のやり方④血の量・回数など

井穴刺絡療法のやり方⑤どの井穴を刺絡するか その1

井穴刺絡療法のやり方⑥どの井穴を刺絡するか その2

手のツボ合谷にせんねん灸

その他の井穴刺療法の記事のリンク

井穴刺絡療法が効かない・効果が薄い場合

井穴刺絡療法はピタリと当たった時、効果の強さや即効性に驚かされることが何度もありますが、万能ではなく当然効かない時、効果がイマイチな時もあります。

井穴より先に体の古傷にアプローチ

虫垂炎などの手術痕・骨折痕・ヤケド痕があったらまずそちらにアプローチしたほうが変化しやすいことがあります。例えば腰痛でF4F5など刺絡したり、内臓の状態を聞いたり調べたり(腹診など)して対応する井穴に刺絡したけれど変化なく、よくよくお話を聞いていくと患者さんが子供のころ虫垂炎の手術を受けたのを思い出して手術痕に円皮鍼を貼ったら、あっさり腰痛が治ったという事例はけっこうあります。

古傷へのアプローチについて詳しく知りたい方は医道の日本第542号(平成元年10月号)・第543号(平成元年11月号)の松本岐子先生の「古傷の癒着と鍼灸」の記事などをご覧になってください(この他にも松本先生の傷に対する記事はいくつかあります)。鍼灸学校にはバックナンバーが置いてある所もあります。(ちなみに私の母校 国際鍼灸専門学校には無く、国立国会図書館でコピーしました)

栄養の問題

いくら良い治療であっても患者さんに栄養の問題があれば、その時良くなったと思ってもまたすぐに元に戻ったり、長い目で見れば悪化の方向に進んでいきます。

例えばアトピー性皮膚炎でアトピーを抑えるH5F5を刺絡したとしても、皮膚の材料となるたんぱく質が不足していれば改善はしにくく、ビタミンAや亜鉛など皮膚を健康に保つ為のビタミン・ミネラルが不足していればやはり改善しにくいです。栄養問題に関して以下のサイトをお勧めします。

ドクター江部の糖尿病徒然日記(糖質制限の第一人者 江部康二先生のブログ)

以下の記事で江部康二先生監修の糖質制限レシピ本のレビューを書いてます。どの書籍にも糖質制限についての基本的な事が分かり易く記載されています。

精神科医こてつ名誉院長のブログ(分子栄養学の第一人者藤川徳美先生のブログ)

ブログを読むのが大変ならこちらがお勧め