井穴刺絡を中心としたアトピー治療

アトピーにH5F5井穴刺絡

井穴刺絡療法によるアトピー治療

アトピーで痒みのある所から血を出して症状を抑えようとする方法があります。患部の皮膚に傷をつけ、吸引する道具・機械などで瘀血(汚血 おけつ)という毒素を抜くという解釈でやるものです。

汚血(瘀血 おけつ)を吸引する道具画像

井穴刺絡療法(せいけつしらくりょうほう)では、手足の爪の横にある井穴(せいけつ)から少量の血を手で絞り出すことによって脳に刺激を送り、神経の働きを調整する方法で、いわゆる「瀉血(しゃけつ)」とは違います。

鍼灸師の中では実践している人は少ないものの近年、井穴刺絡学会の啓蒙活動により少しずつ増えてきています。

副交感神経の異常興奮の抑制

井穴刺絡療法では副交感神経の異常興奮が原因のアトピー等のアレルギー症状を改善するのが目的で、食品などに対するアレルギーなどは対象外です。

アトピーに使う井穴(せいけつ)H5F5の図

自律神経の副交感神経の異常興奮の抑制のための井穴は手足の薬指の爪の小指側の角にある左右のH5F5です。

通常は左右の手のH5と足のF5の4か所はセットで使いますが、患部が横隔膜より上の時はH5,下の時はF5など使い分けることもあります。

効果の強さはH5>F5で、反応が強い患者さん(特に小児)は患部の場所に限らずH5だけで対応したり、左右どちらかのH5一か所だけで終わる場合もあります。

実際のやり方

井穴刺絡の道具

テルモファインタッチ画像

一般の方が井穴刺絡する場合、ネットで購入できるファインタッチ(右)とメディセーフ針を使います。セットで買うと2千円~3千円くらいです。

マツモトキヨシやツルハドラッグなどのドラッグストアや薬局で売っている消毒用エタノール綿花を用意します。

実施する回数は最初の1週間は毎日、2週目は1日おき、3週目は3日に1回でトータルの回数が15回で一旦終了となります。

回数を重ねていく間に井穴の部分が痛くなってくるので、その時はお灸など刺激を変えたり、H5F5に関しては他の井穴と違い爪の周りなら効果が出るので、反対側の爪の角(親指側)から刺絡することもあります。

やり方は鍼灸師でない一般の方でも出来ますので、教わりたい方には細かくお教えしてます。(大抵の方は一度、一緒にやってみるとコツを掴んで帰られます。百聞は一見に如かずという事でしょうか)

詳しくは以下の記事と関連記事をご覧ください。

手足の井穴図

自分で井穴刺絡療法をやることに抵抗がある方は一般の方でもやり易い以下の方法を試してみてください。以下の方法もご希望の方にやり方をお教えしています。

せんねん灸
井穴にパイオネックス

夏井睦先生のアトピー治療

なついキズとやけどのクリニックの夏井睦先生はなつい式湿潤治療というご自分で考案された方法で数多くの患者さんを治療されている医師で、夏井先生のクリニックにはキズ・やけど以外にアトピーで来院される患者さんもいて、治療されています。

治療例①

治療例②

治療例③

治療例④

先生のクリニックでの処置の他に患者さんへの自宅での治療方法として以下の事を述べられています。

乳幼児のアトピー性皮膚炎と乾燥肌

・ボディソープ・シャンプーの使用を止め、お湯だけで洗うようにする。これらは界面活  性剤が主成分なので、強烈に肌を乾燥させ、乳児の場合はこれだけで皮膚の状態が改善することが多い。ちなみに、人間の肌から分泌されるものは全て水溶性で、水・お湯に溶けない汚れはない。

・どうしても石鹸を使わないと気がすまないという場合は、ニオイの気になる部分だけ固形石鹸を使用する。

・それでも肌の乾燥がある場合には、一日数回、白色ワセリン(プロペト)かプラスチベースを塗布する。

・ヒルドイドソフトなどのクリームの塗り薬は強力な乾燥剤なので、絶対に使用しない。

それ以降のアトピー性皮膚炎と乾燥肌

・食事を糖質制限に切り替える。これだけで良くなることが少なくない。

・界面活性剤の使用を止め、ワセリンで保湿するのは同じ。

・ナイロンタオルは絶対使用しない。

・ヒルドイドソフトなどのクリームを使わないのも同様。

・罹病期間が長く、さまざまな治療を施されてきた患者さんは、なかなか難しい。

なつい式湿潤治療に興味のある方はコチラ→なつい式湿潤治療の医師リスト

現在私は夏井先生のサイトを参考に髪はシャンプーを使わずお湯だけで洗い、体もボディソープなどで洗わず365日湯舟にしっかり浸かるだけの生活です。(夏井先生はシャワーのみ)

キズができたらハイドロコロイドを貼り付ける、皮膚や唇が乾燥したらワセリンを塗る、という湿潤治療(洗いすぎて乾燥させない・乾燥したら保湿する)を続けていますが問題なく過ごしています。

医療用素材 ハイドロコロイドの画像

アトピー治療のための栄養療法

糖質制限(高タンパク・低糖質)

糖質制限がアトピーに効果的であるメカニズムは現在はっきりとは判っていませんが、糖質の少ない食生活が人間本来の食事の形態に近いことから、体内の代謝が安定し、自然治癒力が高まるのでは?と考えられているようです。また、分子栄養学では糖質摂取による血糖の上昇・インスリンによる急低下によってステロイドホルモンのコルチゾールが大量に使われることで「副腎疲労」を起こし、結果としてアトピーがでるのでは?と考えられてます。

糖質制限を自ら実践し、臨床の場では患者さんに指導している医師の方々から実感として糖質制限の有効性が語られています。以下の記事も参考にしてください。

たがしゅう先生ブログのアトピー記事

糖質制限を詳しく知りたい人のための書籍

以下の記事はレシピ本のレビューですが、糖質制限の理論が分かり易く説明され、具体的にどんな物を食べれば良いか教えてくれる優れた書籍ばかりです。

皮膚を健康に保つビタミン・ミネラル

私の皮膚のトラブルは栄養面では糖質制限・亜鉛とビタミンCのサプリの摂取を始めてから変化がありました。人それぞれ不足している栄養素は違いますので、糖質制限を実践する時に以下の栄養を摂取することをお勧めします。どの食材も糖質量の少ない物を載せています。

  • ビタミンA・・・・レバー、卵黄、バターなど
  • ビタミンB2・・・・鶏肉、魚肉、ほうれん草、ヨーグルトなど
  • ビタミンB6・・・・アボカド、卵、大豆、クルミなど
  • ビオチン・・・・大豆、ピーナッツ、など
  • パントテン酸・・・・鶏レバー、魚介類、アボカドなど
  • ビタミンC・・・・ブロッコリー、ピーマン、キウイなど
  • 亜鉛・・・・牡蠣、豚レバー、納豆、高野豆腐など

アトピーに対するプロテインやビタミン・ミネラルのサプリの摂取による栄養療法について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。

藤川徳美医師のブログ

藤川徳美先生のブログのアトピー記事まとめの画像

私は藤川先生の著書とブログを参考に分子栄養療法(メガビタミン健康法)を実践しています。下の写真は始めたころのサプリです。私と両親・姉が実践している分子栄養療法(プロテインは何を飲んでいるか、サプリは何を飲んでいるかなど)もご希望の方に説明しています。

参考図書・サイト

  • 21世紀の医学 浅見鉄男著 近代文芸社
  • アレルギーは「砂糖」をやめればよくなる! 溝口徹著 青春出版社
  • サプリメント大図鑑 佐藤務監修 稲葉貴洋 絵 総合法令出版
  • ビジュアル版 糖質制限の教科書 江部康二監修 洋泉社
  • 分子栄養療法の藤川徳美先生のブログ

アトピーにへその塩灸

先人達の臨床体験

ドイツのフネケ博士は子供のアトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患に臍の中央に麻酔薬のキシロカイン注射を打ち、効果を上げていたそうです。これは薬の働きではなく臍への刺針がアレルギーに作用しているのでは、と鍼灸師松本岐子先生は考えています。

松本岐子先生は臨床上アレルギー疾患の患者に、臍または臍のまわりに圧痛や硬結があるのを確認し、そこに刺鍼や塩灸をしています。

指圧の大家 名迫行雄先生は指圧によって全身の血液の流れを改善することで病気・不調を治す「血液循環健康法」を提唱し、様々な疾患に対処していくなかで臍の横に副腎のポイントがあり、そこをほぐすことがアトピーを改善させていく方法であると主張されてます。松本岐子先生は名迫先生からこの副腎のポイントを教わり、そこを改善する経穴を使って治療しています。

へその塩灸のやり方

へその塩灸の道具画像
へその塩灸道具の画像
へその塩灸の道具画像

ガムテープや養生テープなど使い終えたものの芯の部分を取っておいて、コピー用紙を適当な大きさに切り、芯にくっつけます。本当は竹の筒がベストなのですが入手が困難なので代用品としてやってます。コピー用紙だけで入れ物を作ることも可能です。

へその塩灸の道具画像

底に粗塩を1㎝ぐらいの高さで入れて、せんねん灸2~3個を火をつけたところを下にして入れます。

アトピーに対するへその灸の画像

せんねん灸は手に入れるのが簡単(ドラッグストアに売っている)ですが、粗塩の上で火がついた方が上になってしまったりしてちょっと面倒くさいので「煙が多いのは換気扇回せば大丈夫」という方にはモグサを丸めたの物に火をつけた方が早く出来ます。

へそに置いたら熱いのを我慢してずっとそのままの位置に置くのではなく、へその周りを円を描くように少しづづ動かして「心地よい温かさ」がへそとその周りに感じるまで続けます。

粗塩は熱が加わって硬くなったところ捨てれば再利用できますが、コピー用紙は塩の湿気を吸って脆くなっているかもしれないので1日使ったら替えます。「臍に直接せんねん灸やれば良いのでは?」と考える方もいると思いますが、粗塩に含まれる適度な水分がヤケドせずジンワリと温めてくれるようです。

参考文献

①医道の日本 第555号(平成2年11月号)1990年

②医道の日本 第640号(平成9年11月号)1997年

③疾患別治療大百科シリーズ6 アレルギー疾患 医道の日本社

④血液が病気を治す 名迫行雄著 中央文化出版